はーあ、と大きな溜息を吐いて、テーブルの向かいに座っている出水がシャーペンを投げ出したから、次の言葉は絶対に「休憩にしよーぜ」だなと予想して、壁に掛かった時計を見る。 午後14時25分。夏休みの課題を始めてからまだ1時間しか経っていない。

「……出水、まだなにひとつ終わってないよ」
「わかってっけどイマイチ集中できないっつーか…おれ飲みもん持ってくるけど麦茶でいいか?」
「ありがとう」
「ん」

  部屋を後にする出水の背中を見送ってから、わたしもシャーペンをノートの上に置いた。 出水の部屋は、おうちの2階にあって、夏といえど窓を開けると気持ちの良い風が時折入ってくる。扇風機によって作られる風に混ざるそれがわたしの前髪を乱すのを目を閉じて受け入れながら、制服の胸元を親指と人差し指でつまんでぱたぱたと仰いだ。 夏休みにも関わらず制服を着ているのは、登校日だったからだ。そこそこに溜まっていた宿題を片付けるために、ボーダーの任務もないというから、出水の部屋にお邪魔した。

「オレンジジュースあったわ」
「いいの?ありがとう」
「おう。氷入れたけどいいよな」

出水の手に握られたグラスの水玉模様はご丁寧にひとつは青色、もうひとつはピンク色で、おうちにあるグラスからそれをわざわざ選んだのかと思うと少し笑ってしまう。おまけに脇には手に持ちきれなかったのだろう、ポテトチップスの袋が挟まれていた。座りながら、「夏休みもあと半分だよな~、」と話を切り出した様子からして、しばらく課題を再開させる気はないようだ。

「…なあ篠村」

わたしの触れた指先が出水の伸ばされた手に捕まった。

「こっち来て」
「……………英語終わってからね」

その手を反対の手でぺち、と鳴らして叩いた。 こういう時の出水はたぶん、キスしたいときの出水だ。いつもはわたしがこう言うと「はいはい」と不満げに離れるのだけれど、今日はどうやら引き下がる気はないらしい。指を絡めて握られた片手を軽く引かれて、「なあって」と続ける。 こうなると出水は結構しつこい。ので、溜息を軽く吐いて出水の隣に掛け直し、伸びてきた手をわざと遮るよう、向い側に置いたたままのノートとペンを引き寄せた。

「かわいくねー」
「あのね。ほんとに、課題やばいの。わかる?」
「でもおれは今したい」
「わたしはしたくない」
「じゃあ篠村はしてていいよ、課題」

はっ?と反論する前に、腰に腕が回されて簡単にわたしは出水の前に座らされる。崩れた足を整えなおして、「なに、」と振り向いたら「いいから、すんだろ。課題」と言われてしまった。 まあ、後ろから抱きしめられるくらいなら。とシャーペンを手に取って、気にしないように教科書の英文をノートに写していると、ふいに制服の上から胸がきゅう、と掴まれた。

「ちょ、っと!出水!?」
「なに」
「ちょ、やめてほんとに」
「なんで?」
「なんでって…」
「課題したいんだろ?すればいいじゃん」

出水の口元が、いたずらっ子みたいににや、と歪む。その間もふにゃふにゃと胸が持ち上げられたり、揉まれたりして、時折ぴく、と肩が跳ねて困った。

「~~~~~!てっ、手つきがやらしい!」
「やらしい事しようとしてるしなー」
「バカじゃないの?!」
「ほら手、動いてないぜ」

……こうなったら無視だ。 そう決めてノートに英文を写すのを再開するも、集中するどころか、だんだん身体が熱くなってきてるのが、自分でもわかる。 制服の上からだからか、いつもよりちょっと力が強いのと、ぐっとわたしの胸を触ってる出水の手が視界に入って、余計にやらしい気分になった。でもそれを悟られたくなくて、ふうふう吐きたい息をくちびるを噛んで耐えていると、出水の片方の手がわたしの首の後ろの髪を掻き分けて、べろ、と舐める。「ひっ」と声が出た。

「っあ、 や やめ、いず、み」
「課題は?」
「や、う そ、 っ…!」

スカートに入れてたシャツの裾は既に引き出されて、くるくるおなかを撫でられたかと思ったら、指でブラの布のとこを引っ掛けて下げられて、そのままもう固くなってる先端をはじくように弄られると、もう文字なんてかけなかった。 それでもなんとかシャーペンを握ったままでいると出水が首にちゅ、ちゅとキスを繰り返す。 ふいに、きゅっと先っぽをつままれて、びくんと肩が跳ねるのと同時に、わたしの手からシャーペンが転がり落ちた。

「篠村」

耳が軽く噛まれる。

「ベッド行こ」

転がったシャーペンは拾い上げられない。


寝転んだわたしに馬乗りになったまま、出水はベッドのそばにある窓を閉めた。

「閉めるんだ……」
「そりゃまあ。暑い?クーラーつけるか?」
「んーん…おなか冷える…」
「そっか」

ぎゅっとわたしが抱いていた枕を退かして、露わになった胸に、ちゅっとくちびるを寄せられた。 自分のおでこに手を乗せて、顔を逸らすようにして耐える。意識がしっかりとしている状態の、甘い刺激は羞恥心を煽られる。

「ちょっと汗の味する」
「う、や やだっ、出水やっぱりやめ」
「やめねーよ。なんつーか…興奮する?」
「ばかっ、う 出水、ぁや」

興奮するポイントがわかんないよっ! 叫びたかったけど、出水がちゅっと胸を吸ったのでまたびく、と身体が跳ねた。 あんまりたくさん、先っぽ、いじくられると痛くなっちゃうんだけど、ぺろってなめる出水の舌があつくて、あともう片方のわたしの胸をふにふにといじる手もあつくて、なんかいつもより急いてる?みたいで、わたしもその熱に浮かされたみたいに、ひりひりとしたのも、きもちいいような気持ちになる。 おなかのした、が、熱い。はあはあと言葉にならない息ばかりが出る。 流されてるんだけど、流されてしまったけど!悔しくて触ってほしいとか言えなくて、足を擦り合わせてもどかしい気持ちを耐え忍ぼうとするも、間にある出水の膝がそれを阻止していて、どうしようもなくその頭をぎゅっと抱きしめた。

「篠村、篠村」
「っはぁ、 な、に…」
「息できねーからちょっと弱めて」
「あっ、ご、ごめ」
「いーけど、………こっち?」

する、と出水が膝を立ててたわたしの内ももを撫でる。「っあ」と声が漏れた口を両手で塞いだ。

「我慢できない?」

意地悪そうに笑って、手がそうっと焦らすようにわたしの足を行き来する。求めてるのとちがう弱い刺激に、ぴくぴくと片足が持ち上がって、スカートが捲れ上がってるのが自分でもわかる。 下着、が、見える…のは気にするだけもう無駄かもしれない。 それでも触って、とねだるのはなんだか癪で、「ん、ん、」と両手で口を塞いだまま耐えてると出水がその手を退かせて、顔を寄せて、キスされた。ちゅって、かわいいほうの。

「なあ篠村、触りたい」
「ぅ、え ぁう」
「言って、篠村…」
「うゃ、 っ…… い、いずみぃ……」
「うん」

名前で呼んだ、それだけだったのに。だいぶわたしが限界の様子だったのか、出水は満足してくれたようで、簡単に下着が脱がされる。 出水の指がわたしの、に、触れる。くちゃ、と水音がした。 なぞるように2、3回指が動いて、そのまま中に入り、クッと指が曲げられる。きもちい、とこ、だ。出水、だけが、しってる。

「あっ! ぁ、やぁ アッ、」
「は、ごめ、篠村」
「んっ、んっ ン」
「ゆっくり、すっから…」

さっきまでずっと弱い刺激で、焦らされてたからかいきなり、ゆび、で、目がちかちかした。ぎゅうっと出水の肩にしがみつく。出水の髪が、頬に触れる。 ゆっくりするから、との言葉通り、出水の指がこんどは奥をぐりぐりと小さくかき回すように動く。

「っ~~~!」

目をつむったら、ちょっと涙がにじんだ。いつもは、周り、触ってから指いれてくれるのに、いきなりだから、ちょっと苦しい。苦しいけど、もっと苦しいのを、わたしは知ってる。出水になら、たくさん苦しくして欲しいきもちになる。

「い、出水っ…」

しがみつきながら、名前を呼ぶ。

「も、いれて、ほしい…」
「でも痛いってまだこれ」
「いいの、いいから…出水、はやく」
「ん………」

出水がわたしから離れて、制服のズボンの後ろポケットからあ、あの…あかちゃんできなくなるやつ、を取り出した。 お、おまえそんなとこに…そんなとこに直接…!と言いたくなったけどとりあえず黙って、ぼうっと見てたら「見んなよ」と言われてしまった。 い、出水はさんざん見てるくせに! 抗議したいところだが、わたしもなんだかんだはずかしいので、目を逸らす。氷が溶けているのだろう、2層になったテーブルの上のオレンジジュースを見つめているとカチャ、とベルトが外される音がした。 じゅんびできたのか、「篠村」と呼ばれて、落ち着いてきた息がまた期待で荒くなった。 はやく出水でいっぱいになりたい。はやく苦しくしてほしい。顔を向けると、出水が覆いかぶさってきて、わたしの背中に腕を回す。 と、期待とは裏腹にそのまま持ち上げられて、出水と向かい合って座るみたいな形になった。なに…、と尋ねる前に、出水が言う。

「な、このまましよーぜ。腰落として」
「えっ、や、むりだって」
「無理じゃねーっていつも入ってるし」
「や、そういう問題じゃないって!」
「支えてやっから…な?」

な?じゃない!!どこでそういう知識を持ってくるんだ!! 米屋くんかそれともなんかボーダーのせんぱいか?!と半泣きになりかけたけど、こういうときにほかの男の子の名前をだすと途端に結構不機嫌になってしまうので口を噤んだ。 それに、わたしもなんだかんだ言ってはやく出水のがほしい。これしか今、気持ちよくなれないのなら。 …わたしじゃない、し、出水がしたがったし……言い訳を脳内でして自分を納得させ、膝立ちになって、出水の肩に両手を置く。そろそろ、と腰を落としていくと、出水の、とわたしのが触れた。びりって電流が走るみたいにわたしの身体があまくしびれる。

「ぁっ!」
「っ、」

触れて、でも、その先、がはじめてのときみたいに怖くて、もういたくないのなんてわかってるのに、あとどうすればいいのかわかんなくって勇気がでなくて、出水のでじぶんのになでつけるように腰を前後にちいさく揺らす。ちゅ、ちゅ、と音が鳴るのが、やらしくて、はずかしい。

「なあ、篠村…」
「は、な、なにっ……」
「すげえ、生殺しなんだけど………」
「そう思うなら出水がっ、やってよう、できないよ、」

背中とか、熱くて。胸もどきどきじゃなくってもう、どんどんって鳴ってて、でも刺激はもらえなくって、ほとんど泣きながら出水に言うと、「ゴメン、いじめすぎた」と喉元にキスされる。 かと思うと、ぐっ、と腰が掴まれて、出水のが、入ってきた。圧迫感で、くるしくなって、体勢のせいか奥まで入ってきて、一瞬視界が白くなる。

「ぁやっ…いずっ、あ、ぁあ…っ」
「ん、篠村、キツ…」
「は、 あ、まっ、まだ、動かない、で」
「焦らすなってまじ…おれ、キツ…っ」

ぎゅうぎゅう出水の首に腕をまわして、引っ付けば引っ付くだけなかも出水のでいっぱいになる。 身体が発熱して、もう熱あるんじゃないの?!みたいな、もう溶けてなくなっちゃうんじゃないの、みたいなくらいあつくて苦しい。奥までいずみのでいっぱいに広げられて、なんかどっかいっちゃいそうで変で「こうへい、公平、」と縋るように首元にくちびるをつけたまま名前を呼んでいたら、出水がわたしを片手でそれぞれ腰と、肩を抱いてわたしを押さえつけて、下から突くように動く。

「あっ、あっ、 あ、」
「はぁっ…ん、つぐみ、」
「ん、こうへ、 ん、んっ!」

名前をよばれて嬉しくなって、キスをねだるように顔を近づけて目を瞑ると出水が、何度も何度も角度を変えてわたしに口付ける。時折、揺れるから離れるんだけど、くっつきたくて、2人ともそれは同じきもちみたいて、また顔を寄せ合って、キスする。 うん、うん、あついね出水…。とけちゃいそうだね。 そのままキスしてくれてる出水のこめかみに手を添えて、じんわり滲む汗をとかたくなる、のがわかって、出水がぎゅっと目を瞑ったから、いきそ、なのかな、と思った。 は、は、と短く吐かれる息が、すきで、わたしのもぎゅっとなる。ぐちゃぐちゃってちょっと荒くかき回されて、音もいやらしいしなんかぜんぶ、エッチで、恥ずかしいのに、でもぞくぞくって駆け上ってくるのが気持ちよくて、意識をどこかに飛ばしちゃいそなのがこわくて、肩のシャツを一生懸命掴むけど、どこかで、やっぱり、脱いだほうが、よかったなあ。脱がせてもらったらよかった、なんて考えていた。だってこんな服一枚でももどかしい。出水といっしょになりたいよ。

「は、つぐみ、もう…」
「んっ、うん、出水っ、あ、うっ、わたし、もっ」
「ん、っ、」
「出水、いずみ、すき、すきだよ、いずみ、…っ、あ、あっ!」
「っ… !おま、っ…は、 ……、」

ぐっと出水のがいちばん固くなったと思ったら出てって、それから出された、のがわかった。はあ、はあ、と肩で息してる出水に手をのばして抱きつくとなすがままに抱きしめられてくれて、それが愛おしくて出水の汗ばんだおでこに口付ける。ちょっとしょっぱい。ほんとうだ、ぜんぜん嫌じゃないね。


「……結局ひとつも課題終わらなかった……」
「なー」
「なー、じゃないよ誰のせいだと!」

あんなに暑かったのに、夜は涼しい…とまではいかないけど、過ごしやすくて、さっきまでの熱が心地よく下げられていく。 虫の声が大きく聞こえる帰り道。てんてんと規則正しく設置された街頭の間を歩きながら、ゆるく絡まった指先を抗議の意味もこめてぎゅっと握ると「イテテ」と対して痛くもなさそうな声が返ってきたから思わず笑ってしまった。 出水はもう片方の腕で持ってるわたしの鞄を肩に掛けなおしながら、手を繋ぎなおす。

「なあ、来週の夏祭り、まじで浴衣着ねーの?」
「え~、どうしよ」
「着てよ」
「…んー…でもなんか遊んでばっかな気がす… んっ!」

言いかけた言葉は、出水に手を引かれて唇で奪われてしまった。ちゅっと音を立ててすぐに離れたけど、ここは外だし、いきなりで目も瞑ってなかったし、……もう!なんて、言いながら片手を上げると出水は両手を軽く上げてタンマタンマ、と冗談ぽく言う。

「いーじゃん。夏だしいっぱい遊ぼー… っ、」

ぜ、と続けたかったのだろう、それを今度はわたしが出水の無防備な腕を思いっきりひっぱってバランスを崩させて、唇を塞ぐ。 歯がぶつからなくてホッとしたのは隠して、ふん。としてやったりな顔を見せると、妙に出水は嬉しそうな顔をして、また指を絡めた。

「…ちょっと遠回りしよ」
「あんまり遅くなると怒られちゃうよ」
「そんときは一緒に謝るよ」

月がやけに鮮明に輝いてみえるから、遠回りの距離が嬉しい。夏はまだ始まったばかりだ。

20xxxxxx / 君はいちばんのお気に入り